神戸北ロータリークラブ 卓話 2012.01.20 動脈硬化   茅園建新


  がん、心筋梗塞、脳血管障害は日本人の死因のもっとも大きな割合を占めていますが、このうち、心筋梗塞と脳血管障害は動脈硬化が一番の原因です。
どのようなものでも経年による劣化や老化が起こります。
ウィリアム・オスラーというカナダの医学者は数々の名言を残していますが、その中に「
A man is as old as his arteries (人は動脈と共に老いる)」と言うのがあります。動脈硬化とは血管の壁が硬くなることをいいます。
  動脈の役割は体全体に酸素や栄養を配ることですが、若いときは弾力性に富み血管の内側は表面が滑らかですが、年を重ねるにしたがってカゼをひいたゴムや古いホースのように弾力性が失われ、硬くなったり、内部腔(血液の通り道)に脂肪や石灰などが沈着して内側が狭くなったりデコボコしてきます。こうなると、血管の内側に血のかたまりができやすくなり、血管が狭くなったり、詰ったり、「こぶ」のようになったり、膨らんだり、裂けたり、破裂したりして、血液がスムースに流れなくなってしまい、また、詰まったりして組織や臓器に血液が充分行かなくなってしまいます

  動脈は内膜、中膜と外膜の3層からできていて
3層のどの部分にどのように動脈硬化が起こるかでアテローム硬化、中膜硬化と細動脈硬化に分けられます。
アテローム(粥状ジュクジョウ)硬化

  大動脈や脳動脈、冠動脈などの重要な動脈に起こりやすく、このタイプの動脈硬化が一番多く、またコレステロールとの関係も大きい動脈硬化です。
中膜硬化

  頸部、胸部、腹部や下肢等の大きな動脈に起こりやすい動脈硬化です。中膜にカルシウムがたまって、硬くなって、もろくなり、血管壁が破れたりします。
細動脈硬化

  高血圧による変化で、脳や腎臓などの細い動脈に起き易く、血液が流れにくくなったり、詰ったり、血管の壁全体が破裂して出血したりします。しかし、これはコレステロールとは関係がないとされています。
  動脈硬化は全身のどこの動脈でも起こりますが、起こる場所により病状が異なってまいります。
脳動脈、頚動脈
 
脳に酸素や栄養を運ぶ動脈が脳動脈や頚動脈です。動脈硬化によって血管が詰まり、血流が途絶えて起こるのが脳梗塞、もろくなった血管が血圧に耐えきれず破裂して出血を起こすのが脳出血です。脳血管障害による痴呆症や認知症は、脳の動脈硬化により脳梗塞や脳出血などにより、脳の一部が障害を受けて起こります。

 冠動脈

  心臓に酸素や栄養を運んでいる冠動脈が動脈硬化により狭くなると血流量が減り心臓の筋肉に酸素不足が起こり、胸痛や息苦しさを伴う狭心症が起こり、冠動脈が詰まってしまうと心筋梗塞を起こします。
胸部や腹部の大動脈
 
動脈硬化により動脈の一部がふくれてコブができることを動脈瘤といい、破裂すると大量の出血で死亡してしまいます。
腎動脈
 
高血圧により腎臓の細い動脈の硬化が起こると、血量が減少し腎臓の機能が低下します。
末梢動脈
 
下肢の動脈硬化で血流が悪くなるとしびれや痛みなどが現れます。症状が進行すると少し歩くと
下肢に異常感覚と激痛・緊張感を覚え、すこし休息すれば、又歩けるようになる間欠性跛行と言う症状が出ます足指の血液が不足して壊死を起こてしまうこともあります。これは脊柱管狭窄症という背骨の病気でも起こります。ゴルフは丁度200ヤードも歩けば少し休んで、打って、又歩くと言う動作なので、ある意味良いかもしれませんが飛ばしすぎると一度に沢山歩かねばなりません。余り飛ばしすぎない方が良いかもしれません。


動脈硬化の危険因子(リスクファクター)
  動脈硬化のリスクファクターには色々な要素がありますが、年齢や性別、遺伝的素因に加え脂質異常、高血圧、糖尿病、肥満、タバコやストレス、A型性格などがリスクファクターと考えられています。
これらのリスクファクターが重なると、動脈硬化の危険性が高くなっていきます。
A型性格と言うのは、特に血液型がA型の人のと言うことではありません。A型に多いかもしれませんが、負けん気が強く、短気でせっかち、几帳面でストレスのたまりやすい性格の人をA型性格と言い、このような人はストレスで交感神経が刺激されると血管が収縮し血圧が上がり、コレステロール値も上がり動脈硬化も進みやすくなります。

  脂質異常症(高脂血症)

 血液の中に含まれている脂肪には、「LDL(悪玉)およびHDL(善玉)コレステロール」「リン脂質」「遊離脂肪酸」「トリグリセリド(中性脂肪)」があります。いずれの脂肪も、細胞膜やホルモンを作ったり、エネルギー源でもあり、生命維持に欠かせないもので、少なければ少ないほど良いというものでもありません。
中性脂肪は、それ自体は動脈硬化の原因にはなりませんが中性脂肪が多いと、善玉コレステロールが減って悪玉コレステロールが増えやすくなり間接的に動脈硬化の原因となります。また、中性脂肪の多い人は、メタボリックシンドロームの危険因子をいくつも持っていることが多いです。

  高血圧

  血圧の高い状態が続くと血管の壁に強い圧力がかかります。そしてその刺激で血管が収縮し、内腔が狭くなります。この圧力に耐えようと血管壁自体が補強され肥厚し、その結果動脈硬化がどんどん進みます。高血圧で血流が強くなったり、喫煙や高コレステロール血症、糖尿病などで血管の内側が傷つくとそこに炎症が起こります。 すると、傷口を修復しようとして血液中の血小板や白血球などが集まってきます。 この白血球の中に血液中のコレステロールを取り込もうとするものがあり、取り込まれたコレステロールは血管に付着していきます。 付着したコレステロールなどのドロドロした塊がアテロームと呼ばれるものです。 このアテロームによりますます内腔が狭くなっていき詰まってしまいます。

  糖尿病

 糖尿病は、血液中の糖分の濃度が高い状態になる病気です。血糖の高い状態が続くと高血圧や脂質異常症などの合併症が起こりやすくなり、それによって動脈硬化も進みます。糖尿病は動脈硬化の進行を10年早めるとまで言われています。

  肥満
 肥満には内臓に脂肪がたまる「内臓脂肪型肥満」と皮下脂肪が増える「皮下脂肪型肥満」があります。内臓脂肪型肥満はコレステロールや中性脂肪が多く、動脈硬化を進行させます。また、肥満は善玉コレステロールを減らし、悪玉コレステロールを増やすと言われています。

  食生活のかたよりで引き起こされる肥満は、脂質異常症や高血圧、糖尿病などの病気の原因となり、さらに動脈硬化が悪化します。

 メタボリックシンドローム
 
内臓脂肪型肥満に糖尿病、高血圧、脂質異常のうちの2つが加わるとメタボリックシンドロームと呼ばれます。メタボリックシンドロームになると、脂肪細胞からアディポサイトカインと言うホルモン様物質が分泌され、高血圧や高血糖の状態となり動脈硬化が進行します。

  痛風
 
血液中の尿酸値が高くなる痛風は、脂質異常症も伴う場合が多く、動脈硬化の危険因子とされています。

  食事や嗜好品
 
肉類や乳製品などにかたよった食事や過食、不規則な食事などは、脂質異常症、高血圧、糖尿病や肥満を招きます。
タバコは血管を収縮させ善玉コレスロールを減らす作用があります。
アルコールは脂質異常症や糖尿病、肥満などの原因となります。
コーヒーの飲み過ぎも動脈硬化の危険因子になると言われています。

 運動不足
 運動不足は消費エネルギーが少なくなり、余分なエネルギーの蓄積が肥満を助長します。
 ストレス
 
精神的・肉体的ストレスは血圧を上昇させ、酒、タバコ等の多量摂取にもつながり、肥満や動脈硬化の原因となります。

 加齢や性差

  老化は血管の弾力性を低下させ、他の病気になる確率も高くなり、動脈硬化の危険性も高まります。また、男性は女性より動脈硬化の進行が早いと言われますが、女性も閉経後はホルモンの関係で動脈硬化の危険性が強まってきます。
 遺伝
 
高血圧、糖尿病や脂質異常症などは、遺伝的な要因が大きく、食習慣や生活規則などの環境も親から子へと影響を与えやすく、動脈硬化の誘因となりやすいです。



動脈硬化の予防

  動脈硬化はある日突然、動脈硬化になるのでありません。10代前半から徐々に始まり、自覚症状もなく知らない間に進行して少しずつ動脈内壁への脂肪の沈着が進んで内腔が狭くなり、血液の流れが悪くなってきます。45才過ぎくらいから症状が出てくることが多いです。
  動脈硬化は老化現象の一つで、避けることは出来ませんが、動脈硬化の進行を出来るだけ遅らせるように生活習慣に気を配る必要があります。

  脳卒中や心筋梗塞で障害を受けた脳や心臓は元には戻りません。何か症状が出たときには、かなり進行した状態になっています。
  日常の生活習慣、食事や運動などに気をつけるだけでも、予防・改善の効果を期待できます。健康診断で脂質異常症や、動脈硬化と診断されても、症状がないからと放っておくとどんどん進行していきます。このようになる前に、食事や運動など日常の生活習慣に気をつけていくことが大切です。
  動脈硬化を促進させる肥満や高血圧、糖尿病、脂質異常症を防ぐために、「毎日3食を規則正しい時間に適量をゆっくりとる」「栄養バランスを考え偏食や過食をしない」「食物繊維を十分にとる」、「適度な運動を毎日続ける」ように心がけて下さい。


 食事

○食べ過ぎないように 太ると血圧が上がり、脂質異常症を招き、心臓への負担も増えます。
○食事の脂肪の量と質を考える 脂肪が食事全体のカロリーの4分の1以上を占めないよう注意する。また、肉やバターの脂肪など固形の脂肪より液状の脂肪(植物性脂肪・魚油)の方がいいと言われています。
○食物繊維を十分に摂る 食物繊維はコレステロールの排泄を促し悪玉コレステロールを下げます。ペクチンを含む
野菜や果実、特にリンゴ、イチジクや柑橘類の皮やジャムがいいです。
○砂糖や果物(果糖)を摂り過ぎない。取りすぎると中性脂肪になりやすいですが、適量の果糖はエネルギー変換率も高く疲労回復にも有用です。
○アルコールは適量を守る……1日ビール1本、日本酒1合程度に。
○豆類を積極的に摂る……大豆タンパクは血清コレステロールを低下させると言われ、同時に植物性脂肪や食物繊維も摂れる。
○水分摂取 脱水状態になると血液がネバネバになり固まりやすくなります。
○ビタミンE
( 大豆油・コーン油・ナタネ油・ゴマ油などの植物油、穀類の胚芽、豆類、ナッツ類)
○ベータカロチンを多く含む食品(緑黄色野菜や果物)を積極的に摂る。
極端な菜食主義もよくありません。コレステロールや脂肪はとり過ぎてはいけませんが、不足してもよくありません。コレステロールは体内で細胞膜やホルモンの材料として必要不可欠です。不足すると、逆に血管が弱くなってしまいます。

 運動
  運動不足は脂質異常症や内臓脂肪型肥満、高血圧などを促進します。
  身体に無理をかけない適度な有酸素運動(ウォーキング、水泳、水中ウォーキング、体操など)を続けましょう。有酸素運動で筋肉を活発に動かすと、脂肪を分解する酵素「リポタンパクリパーゼ」が働き、善玉コレステロールが増え、悪玉コレステロールが減ると言われています。
  ウォーキングやジョギングを1日2〜3キロを目標に行うと2〜3週間で確実に効果が現れますので、ぜひ習慣にしてください。毎日続けるのが理想です。
  最近注目されているのが活性酸素です。活性酸素が細胞を傷つけ、老化を促進したり、がん細胞の発生に関与していると言われています。活性酸素を発生させる原因には、肥満、ストレス、タバコや大気汚染、強い紫外線、残留農薬、はげしい運動、電磁波などが挙げられます。活性酸素の害を減らす生活習慣をつけることです。

 動脈硬化に効果のある食品

大豆
大豆に含まれる良質のたんぱく質は血管の修復に必要で、レシチンやイソフラボンはコレステロール低下作用があります。納豆に含まれるナットウキナーゼは血栓予防に効果があります。そのほか
カルシウムや鉄などのミネラル類も豊富な豆腐、湯葉、アゲ、おからやビタミンCの豊富な枝豆などそのほか大豆には骨粗鬆症予防効果、更年期障害の緩和作用、乳がん前立腺がん等の予防効果もあると言われます。
ごま
セサミンやセサミノールなど、強力な抗酸化作用をもつ成分が含まれています。イライラやストレスをやわらげるビタミンB6も多く含まれます。
青背の魚
はまち、あじ、いわし、さばなどに含まれるDHAEPAという不飽和脂肪酸はコレステロールや中性脂肪を下げるはたらきがあります。また、肉と比べ比較的低エネルギーで太りにくい脂肪なのでお勧めです。しかし、内臓や卵にはコレステロールが多く含まれています。
たまねぎ
におい成分のイオウ化合物は抗酸化作用があり、コレステロールや中性脂肪を下げるはたらきがあります。血圧低下、血栓予防にも有効です。
にんにく
イオウ化合物が含まれ、抗酸化作用のほか、コレステロールを下げるはたらきがあります。血管を広げて血圧を下げる効果もあります。

アブラナ科の野菜
キャベツやブロッコリー、カリフラワーなどには抗酸化物質が豊富で動脈硬化の予防に役立ちます。
緑黄色野菜
食物繊維も多くビタミンCやベータカロチンなど、抗酸化ビタミンが豊富で、血管を丈夫に保つ成分も含んでいます。

さやいんげん、アスパラガス、オクラ、カボチャ、大根の葉、クレソン、ししとう、しその葉、春菊、人参、ブロッコリー、トマト、ほうれん草など
柑橘類
香りの成分に抗酸化作用があります。コレステロールを下げる手助けをするイノシトールという成分も含まれます。
ビタミンCビタミンAも多く含まれています。

是非、食事や運動、生活リズム、肥満に気をつけて、動脈硬化の進行をできるだけ遅らせ、いつまでも元気でハツラツとしていてくださることを願っております。